私は牧場での生活を経験して今、思うこと
 
   肉牛
 
     結婚をした時、夫は肉牛の牧場を任されてやっていました。
     従業員が4人くらいいて、乳牛(ホルスタイン)から和牛(またはホルスタインと和牛のハーフ)を
     産ませる実験的なことをやっている牧場でした。
 
     乳牛は子供が生まれないとミルクが出ません。産まれた子供はメスなら乳牛として育て
     オスなら肉牛になるしかありません。だいたいは子牛の頃に肉牛の牧場に売られていきます。
 
     乳牛でも良くミルクの出る牛、ダメな牛といろいろです。
     良くミルクを出す牛に血統の良い種をつけて、子供が産まれメスなら残し、オスなら売ると
     いうことです。
 
     ミルクをあまり出さない牛に乳牛の良い種をつけるよりも、
     肉牛として価値の高い子を産ませる・・・
     産まれた子供は質の良い肉牛、親は乳牛なので、またミルクが出るようになります。
     簡単に言えばそのようなことを実験的にやっているような牧場でした。
 
     その他の牛は全部、肉牛でした。子牛を買ってきて大きく育てて出荷する牧場です。
 
     出荷は本当に悲しいです。
     そして、唯の商品として牛を見る人、悲しみをこらえて牛を見る人働いている従業員も
     いろいろです。
     悲しくても私自身、牛からの売り上げがなかったら暮らしていけなかったでしょう。
     その頃の私はお肉は食べないと人間は栄養が摂れないと思っていました。
 
     出荷の前の日に牛のところに行って、泣きました。
     「どうして牛に産まれて来ちゃったの?ごめんね・・・」
     2年も一緒に面倒みているのですから、牛の信頼した顔・・・
     裏切りをしているような自分達がたまらなく、
     気持ちをどのように切り替えたらよいのかわからなくて本当に辛い時期を過ごしました。
 
     子牛のときに来て、かわいくて面倒を見た牛が大きくなって出世する。
     出世・・・必死になって自分に言い聞かせました。
 
     短い命なのだから、たくさんかわいがって少しでも良い牛に育てよう。
     最初はそう思いましたが、出荷が辛くてだんだん心を無くしてしまいました。
 
     愛情は持たない、どれがどの牛かを個別に覚えない努力・・・牧場の妻としては失格ですね
 
     周りには他にもたくさんの牧場があって、いろいろな人を見てきました。
     本当に牛が好きでやさしく面倒をみている人
     汚い汚い牧場
     良い牛を育てるために努力を惜しまない人
     牛に乱暴すぎる接し方をする人
     30年やっていても出荷のときには悲しくて慣れないよって言ってる人
     皆、牧場を仕事として一生懸命働いて生活しています。
 
     牛自身は?
     完全に改良された牛は自然では生きていくこともできません。
     毎日、与えられたエサを食べて寝ているだけの人生・・・
     狭いところで走り回ることもできない・・・
     でも放牧しても食べて寝ているだけです。それしか出来ないように育てられています。
 
     肉牛なら脂の乗った肉にするために、エサや運動の調節をして作り上げます。
     命も心もある動物でも、良い肉になるためだけの愛情しか与えてもらえない牛
     途中で怪我をしたり、大きく育たないとわかったらすぐ出荷
 
     牛は好奇心も旺盛で、性格もいろいろです。甘えん坊だったり、怖がりだったり、
     いたずらだったり、でもペットのようにかわいがられることもなく、肉になるためだけの扱いを
     受けて死んでいきます。
 
 
   乳牛
 
     夫はこの牧場をやめて自分で酪農をはじめました。
     乳牛ですね。毎日、朝夕と機械を使ってミルクを搾ります。
     牛はおっぱいが張ってきて、痛くなるので時間になるとサッサと機械のあるところにきて
     搾ってもらうのを待っています。
 
     やはりミルクがたくさん出るように改良された牛は必要以上のミルクが出るので
     搾ってやらなかったら病気になってしまいます。
     良質のミルクを何ヶ月もたくさん出す牛が良い牛です。
 
     子牛が産まれたら大抵の場合、すぐ引き離してしまうことが多いです。
     子供を持って行かれるときに牛は嘆き悲しみます。モーモー泣いて追いかけてくる牛、
     悲しくて可哀想で・・・
     子牛に初乳をあげて離す場合もありますが、暫く一緒にして育てさせると、引き離したときに、
     親子で嘆き悲しんで、お互いに呼び合ってモーモー泣いています。
     そして子牛はなかなか哺乳瓶などでミルクを飲んでくれません。
     そんな理由もあって早くに引き離してしまいます。
 
     子牛は最初のころは親のミルクを搾ったものを与えますが、少し大きくなると親のミルクは
     人間の牛乳になるために、もう飲めません。
     子牛用の粉ミルクを与えられて、オスなら肉牛になるために他の牧場に売られていきます。
 
     乳牛もおっぱいが変形して機械で搾れなくなったり、ミルクを出す価値が無くなった牛は
     肉牛として売られてしまいます。
 
     毎日、与えられたエサを食べて寝て、子供を産んでミルクを搾ってもらい、
     発情がきたらすぐ種をつけられて、また子供を産んで・・・
 
     どんな動物も同じように母としての愛情があるのに、育てることも、その喜びにひたることも無く、
     その繰り返しをして肉牛になって死・・・
 
 
     今、思うことは少しずつでも肉を食べる人が減ってきて、一生懸命牧場を経営している人が
     困らないように、自然に牧場が減ってきて、いつか・・・
     こんな悲しい運命しか与えられない動物がいなくなればいいな〜と思います。
 
     ここに書いたことは、私が牧場で経験したことであって、個人経営の牧場での出来事なので、
     そのつもりで、ご理解ください。
 
     私自身は肉、魚、卵、乳製品を食べないヴィーガンですが、まったく食べないと
     厳格にやっているわけではありません。
     少しずつ長い目で、健康のためにいつか、このような動物達を食べなくても良い世の中に、
     なって欲しいと思っています。
 
 
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